校庭を走って行くとき
脊中で筆箱がガシャガシャとうるさいから
ランドセルを鉄棒にひっかけた

先生やクラスのみんなが
僕の名前を呼んでいるのは聞こえたけど

ふり向かないで走った

涙が出てころびそうになったけど
雲から目をそらさないで走った

近くで見たかった

あの雲が 

何に姿を変えるのか どこに降りるのか




湖まで来た

あの雲が映っているのを見て 顔を洗った 

濡れた顔のまま空を見上げたら

雲は消えていた


空も湖も同じ  青  だった



写真撮影:吉野泰弘